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極端紫外光研究施設(UVSOR) 分子研リポート2006 | 分子科学研究所

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将来計画及び運営方針 277

5-2 極端紫外光研究施設(UV S O R )

U V S OR は,1983年完成後,エネルギー 750 M eV ,エミッタンス 160 nm- rad の電子蓄積リングにアンジュレータ 2台と超電導ウィグラを設置した典型的な第2世代の低エネルギーシンクロトロン光源であったが,2000年以降, 特に2003年の大改造を中心とする一連の改造により低エネルギーリングとして極端紫外光領域に最適化された第3 世代光源 U V S OR - II へと生まれ変わった。エミッタンスは 27 nm- rad で定常的に運転されており,これは 1 G eV 以下 の光源(計画・建設中のものも含む)では MA X -III(スウェーデン)に次ぐものである。また,挿入光源の増強も進み, 現在は4台のアンジュレータが設置され稼動している。そのうち2台は真空封止型であり,比較的短波長領域を,また, 残り2台は可変偏光型であり,比較的長波長側をカバーする。これらのビームラインはすべて世界トップクラスであ り,国際的な利用が始まっている。さらに挿入光源設置可能な空間としては 1m 強の直線部2箇所が残されており, 今後の検討を行う。

以下では,光源開発の現状と展望について,平成19年2月14日開催の第49回 U V S O R 施設運営委員会で議論し たものをまとめておく。

5-2-1 UV S O R -II 光源加速器の高度化の現状と展望

今後2〜3年の U V S O R - I I 光源加速器の高度化としては,当面,①トップアップ運転の導入,②軌道安定化,③挿 入光源の更なる増設の3つが柱になる。また,④多様な利用モードを可能にする運転時間の見直しも必要である。将 来的には,⑤ M A X - I I I の性能を超える U V S O R - I I I のための改造も視野に入れる必要がある。以下に,それぞれにつ いて簡単に説明する。

(1) トップアップ運転の実現に向けては,既に,ブースターシンクロトロンのフルエネルギー化(従来は最大エネル ギーが 600 MeV であったが,電磁石電源の増強により 750 MeV まで向上),放射線遮蔽壁の増強が完了し,入射路の フルエネルギー化を2007年春に実施する予定である。この後,フルエネルギー入射調整,輸送効率の向上,インタロッ クシステムの整備などを行い,できるだけ早期のトップアップ運転の実現を目指す。

(2) U V S O R - I I では数時間で 100 ミクロンを超えるような軌道変動が観測されており,光源本来の高輝度特性を活か す妨げとなっている。現在,軌道変動の原因究明と軌道安定化システムの開発を急いでいるところである。水平方向 の軌道安定化については既に部分的にフィードバックシステムを導入しており,今後1年以内に水平垂直両方向の安 定化システムを導入することを目指している。

(3) U V S O R - I I 光源加速器の設計はアンジュレータ利用に最適化されたものとなっており,光源本来の特徴を活かす ためにも,アンジュレータ及びビームラインの早期の整備が望まれる。どのようなアンジュレータを整備するか,利 用側と協議しながら検討を進めていく。

(4) 光源性能そのものではないが,運転時間についても,拡大の余地が出てきている。U V S O R - I I の運転時間は建設 時の放射線申請により1日12時間に制限されてきたが,2006年夏に変更申請を行い,一日24時間の運転が可能と なった。マンパワーの問題でユーザー運転の延長を直ちに行える状況にはないが,シングルバンチ運転,自由電子レー ザー利用など,ユーザーの限られる特殊な運転モードを夜間に実施することを試験的に開始している。柔軟な運転モー ドの切り替えは小型施設の特徴を活かせるものであり,従来にないシンクロトロン光の新しい利用形態が開拓できな いか,模索しているところである。

(5) 更に長期的な展望としては,U V S OR -III 計画と名付けることのできる光源リングの更なる高度化改造の可能性が ある。予備的な検討により偏向電磁石を複合機能型とすることで,現在のエミッタンス 27 nm-rad を更に 15 nm-rad 程

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278 将来計画及び運営方針

度まで改善できることがわかっている。四極電磁石の削減に加え,入射点の移動など機器の再配置を行うことで,現 在入射に使用している 4 m の長直線部を挿入光源用に転用できる可能性が出てくる。

5-2-2 UV S O R 自由電子レーザーの現状と展望

U V S O R における自由電子レーザー開発は,加速器の設計段階から光共振器の建設を想定しているなど,施設の看 板ともいえるものである。実際90年代には,円偏光型光クライストロンの導入により当時の発振短波長世界記録を 樹立するなど,F E L研究で華々しい成果を挙げた。しかし,その後は,D uk e 大学や産総研などにおける F E L専用リ ングの稼動,第3世代リング E l ettra における F E L実験の開始などにより,開発研究面での競争力が低下し,一方, 発振波長域は紫外から可視光に限られていることから,通常レーザーとの競合もあり,利用研究はほとんど進まなかっ た。

しかし2000年代になり光源加速器が U V S O R - I I へと改造されたことで,再び世界的な競争力を取り戻した。低エ ミッタンス化と高周波加速系の増強によるピーク電流値の向上で,波長200–250 nmの深紫外の領域で大強度の発振 が可能となった。また,従来 F E L実験は電子エネルギー 600 M eV で行っていたが,750 M eVでも発振できるように なり,その結果,ビーム寿命が長くなり発振継続時間が長くなると同時に平均出力も向上,波長によっては 1 W を超 えるまでになり,蓄積リング F E Lとしては出力で世界最強となった。深紫外領域で波長連続可変,高出力という特徴 は,通常レーザーと比べても一定の競争力があり,利用の申し込みも徐々に増えてきている。今後は,利用に向けた 研究開発・装置の整備が重要となってくる。

利用の拡大に向けて当面課題となるのは,出力の安定化,実験装置へのレーザー光の安定な輸送法の確立,ミラー 交換の高速化,などである。出力の安定化にはフィードバックシステムの導入を検討中である。レーザー光の輸送は, 放射光ビームラインに既設の装置に F E L光を導入したいという希望が多く,場合によってはリングの反対側まで輸送 する必要がある。従来のミラーを使った輸送法の改良に加えて光ファイバーを使った輸送の検討を開始している。光 共振器には多層膜ミラーを使用しており,波長を大幅に変えるには超高真空中に設置されたミラーを交換する必要が ある。交換すると真空立ち上げなどに数日間かかってしまう。超高真空中で複数枚の多層膜ミラーを設置し,随時交 換できるようなシステムの検討を始めたところである。

F E L性能そのものに関する今後の展望としては,光クライストロンの更新による更なる短波長化,大強度化が考え られる。UV S OR -II となって長くなった直線部に 3 m 強の光クライストロンを導入することで,E lettra や D uke 大学と 同等の波長 180 nm 付近での発振も可能となるものと思われる。更なる短波長化には,ミラーそのものの開発研究が 必要となってくる。

5-2-3 UV S O R -II における外部レーザーを利用した新しい光発生法の開発

2005年に U V S O R - I I の高周波加速と同期の取れるフェムト秒レーザー装置が導入された。これを利用した複数の 新しい光発生法に関する研究がスタートしている。

(1) レーザーバンチスライスによるフェムト秒パルス生成及びコヒーレント光発生

レーザーバンチスライスは90年代の後半に米国の研究チームにより提唱されたビーム技術であり,極短レーザー パルスと電子バンチをアンジュレータ中で相互作用させることで,電子バンチの一部に強いエネルギー変調が生成さ れ,このバンチが蓄積リングを進行する際に変調を受けた部分が切り出される,というものである。切り出されたバ

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将来計画及び運営方針 279 ンチの一部はレーザーパルス長と同程度の長さとなるために,その部分からの放射光を取り出すことでフェムト秒の 放射光パルスを生成する,というのが当初のアイデアであった。しかし同時に,残りのバンチ上に形成されたディッ プ構造からテラヘルツ領域のコヒーレントシンクロトロン放射が生成されるため,現在はこれら2つの目的で研究が 進められている。これまで,A L S ,B E S S Y - II が先行しており,U V S OR - II での実験は世界的には3例目ということに なる。最近では S L S でも開始されたとの情報があり,S oleil などでも導入が検討されているようである。

他 の 施 設 で は バ ン チ ス ラ イ ス 実 験 の た め に 加 速 器 の 一 部 を 改 造 す る な ど 大 掛 か り な 準 備 が 必 要 で あ っ た が, U V S O R - I I では既存の自由電子レーザー用の装置群を流用することで加速器本体には全く手を加えることなく実験を 開始することが出来た。また,電子エネルギーが低いために,必要なエネルギー変調を生成するためのレーザーパワー が比較的低くてよい。最初の実験で直ちに,大強度のコヒーレントテラヘルツ光の発生を確認でき,その後,分子研 の国際共同研究を利用したリール工科大学(仏)との共同実験で入射レーザーパルス形状の制御により,波長可変準 単色のテラヘルツ光の生成に成功するなど,世界的にもトップレベルの成果が挙がるようになってきた。テラヘルツ 光の観測は既存の赤外ビームライン B L 6B を用いて行っている。今後は利用法の開拓とそれに向けた光源開発を更に 進めていきたいと考えている。

テラヘルツ光の観測によりバンチスライスが起きていることは実証できているものの,フェムト秒放射光の直接観 測はまだ行っていない。こちらについても今後観測装置を整備し実施したいと考えている。

バンチスライス法は既存の放射光リングで,従来の放射光とは異なる時間構造,あるいは,ピーク強度の桁違いに 強い光を比較的簡便に生成できる。これら各種の光の単独での利用に加えて,通常の放射光も含めた,複数の性質の 異なる光を同時に利用するタイプの利用方法を開発していくことが重要であると認識している。このことは先に述べ た F E Lについても同様である。

(2) コヒーレント高調波発生

レーザーバンチスライスに用いているレーザー装置を用いて,S ol ei l(仏)のグループと共同でコヒーレント高調 波発生(C oherent Harmonic Generation; C HG)の研究を開始している。C HG は,レーザーパルスと電子バンチをアンジュ レータ中で相互作用させることで生じるエネルギー変調を利用することはバンチスライスと同じである。従って,レー ザーバンチスライスとほぼ同じセットアップで実験できる。電子バンチがアンジュレータを進行する際にバンチ中に レーザー波長と同じ周期での密度変調が生じ,コヒーレントなシンクロトロン放射(アンジュレータ放射)をするが, 密度変調には一般に高調波成分も含まれるために,コヒーレント放射も基本波だけでなく高調波も放出される。

C HG は,X線自由電子レーザーなどいわゆる S A S E を基本原理とするコヒーレント光生成における原理的な不安定 性を取り除く手段として期待されている。本研究では,直線加速器よりも安定性に優れる電子蓄積リングの電子ビー ムを利用し,効率的に技術・知見の蓄積を行おうとしている。

5-2-4 新しい光源建設の可能性

新しい加速器の建設を伴う将来計画の検討では,これまで様々な可能性を幅広く検討してきた。現在,世界に於け る先端的な光源加速器施設は全く異なる性質を持つリング型と直線型を併設するのが標準になりつつある。通常の レーザー光源を組み合わせることで,さらなる発展も期待されている。U V S O R はこれまでリング型を中心に新たな 光源開発を組み込んで共同利用に供してきたが,今後は U V S O R で培ってきた光源開発技術を直線型にも応用するこ とで,世界に先駆けて新たな特性をもつ光源が分子科学に於いて最初に手にはいるようにしていく必要がある。なお,

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280 将来計画及び運営方針

その先の光源加速器はリング型の特性と直線型の特性を併せ持つ E R Lと呼ばれる光源になるのではないかと言われ ており,プロトタイプの開発も一部では始まっているが,現在のリング型と直線型の性能を越えるものにするには, まだまだ解決しなければならない多くの困難があり,今後,最低でも10年くらいの開発期間が必要とされる。

以下,現在考えられる将来計画の様々な可能性についてまとめておく。

(1) リング型光源

U V S OR の次期計画として,U V S OR - I I から U V S OR - I I I への改造ではなくて,全く新しいリング型光源を建設する 場合,考えられる方向性は以下の3つであると思われる。

(a) 1GeV級小型X線リング

(b) 2–3GeV 級中規模第3世代リング

(c) 1GeV級超高輝度リング

このうち ( a) は 1G eV級の小型リングに超電導偏向電磁石を導入することで硬X線の発生可能な小型施設を建設す るというものであるが,これについては名古屋大学と愛知県が協力して実現を目指しているところである。高輝度で はないものの U V S O R - I I では出せない硬X線領域をカバーする施設が近隣にできることになり,U V S O R - I I とは相補 的な役割を果たすものと期待される。そういう意味では現 U V S O R の後継機として岡崎の地で考える必要はないであ ろう。(b) の2–3GeV 級中規模第3世代リングは,東大・東北大がかつて建設を目指していたような規模・性能の光源 である。東大や東北大が断念したことを考えると予算規模や敷地の問題など実現は容易ではないが,現 U V S O R の後 継機の可能性のひとつとして想定しておくべきである。( c ) は 1G eV級でエミッタンス 1 nm- rad もしくはそれ以下の 超低エミッタンスリングを想定している。V U V 領域での回折限界光源の実現を目指す。以下で述べる E R Lなどに比 べて安定性に勝る光源が既存の加速器技術を用いて実現できる可能性がある。また,共振器型自由電子レーザーや C HG など外部レーザーと組み合わせたコヒーレント光発生装置も併設できる可能性がある。

(2) 直線加速器を用いた自由電子レーザーの可能性

現在,世界に於ける先端的な光源加速器施設は全く異なる性質を持つリング型と直線型を併設するのが標準になり つつある。X線自由電子レーザーのテスト機程度もしくはもう少しエネルギーの高いライナックを利用して,シード 光を用いたシングルパス型自由電子レーザーを原理とする光源を U V S O R に併設する。X線自由電子レーザーやリニ アコライダーなどの建設を通じて確立される加速器技術と,現在 U V S O R - I I で行っている C H G に関する基礎研究で 得られた知見などをベースに実現する。V U V ・軟X線領域でのコヒーレント光,極短パルス光の発生を目指す。併設 が不可能な場合には他機関の加速器装置を利用した光源開発や利用研究も想定しておくべきであろう。

(3) エネルギー回収型ライナックを用いた新しい光源の可能性

エネルギー回収型ライナック(E R L )は現在 K E K - P F と原子力機構が中心となってX線の発生に重点を置いた大型 施設の建設を検討しているが,そこで確立された技術を元に,V U V ・軟X線領域に最適化された比較的小型の施設を 建設する。V UV・軟X線領域での回折限界光の発生,極短パルス光の発生に加えて,シングルパス自由電子レーザー, 共振器型自由電子レーザーを組み合わせることが出来る可能性もある。ただし E R L光源が実用になるのは10年を超 える先の長い話なので現時点では他の検討のほうが重要である。

参照

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